2021/8/3
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青色申告と白色申告の違いを分かりやすく解説!

個人で事業をされている方が一年に一度行わなければならない「確定申告」。

一年に一度しか向き合わないので何年たっても「難しい・・・」という印象が変わらない手続ですよね。

特に初めて確定申告を行う方にはそのハードルはとても高いものに感じられます。

その確定申告にも数種類の申告方法があるのですが、誰もが一度は「青色申告」という言葉を耳にしたことがあると思います。

「青色申告を選ぶと色々とお得なことがあるらしい、でも、その分難しくなりそうな・・・。」

「青色申告をしてみたいけど、どのような手続きが必要なのだろうか・・・」

「そもそも青色申告と白色申告の違いって何だろう・・・」

 

今回は、確定申告を始めたばかりの方、もしくは、何年も確定申告をしているけれどまだ慣れない方が抱く

このような悩みを解決するための情報をまとめてみました。

 

【そもそも確定申告とは】

確定申告とは、法人・個人が1年間の損益状況を集計し、収入から費用を差し引いた所得に対して納税額を計算し、

適正に申告・納税をする手続きです。

日本では納税者本人が所得と納税額を計算して申告する「申告納税制度」が採用されています。

通常、確定申告というと個人事業における申告を指します。

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、それぞれのメリット・デメリットが存在します。

【青色申告と白色申告の主な違い】

青色申告と白色申告の主な違いは次の通りとなります。

  青色申告10万円控除 青色申告55万円控除 青色申告65万円控除 白色申告
届出 開業届 青色申告承認申請書 開業届 青色申告承認申請書 開業届 青色申告承認申請書 ×
申告書類 確定申告書B 青色申告決算書 確定申告書B 青色申告決算書 貸借対照表 確定申告書B 青色申告決算書 貸借対照表 確定申告書B 収支内訳書
記帳 複式簿記 複式簿記 複式簿記 単式簿記
帳簿保存義務
各種控除 ×
電子帳簿保存or電子申告 × × ×

また、一定条件のもとの青色申告と白色申告の納税額の違いは次の通りとなります。(単位:円)

申告方式 青色申告65万円控除 白色申告 備考
売上 50,000,000 50,000,000  
経費 40,000,000 40,000,000  
少額減価償却資産の特例 2,000,000 0 青色申告の特典
事業専従者給与 2,400,000 860,000 青色申告の特典で金額に差
青色申告特別控除 650,000 0 青色申告の特典
その他控除 1,500,000 1,500,000  
差し引き所得 3,450,000 7,640,000  
所得税納税額 262,500 1,121,200 差額858,700

端的に言うならば、青色申告の方が記帳のハードルが高い分、納税額は圧倒的に少なくなります。

それではそれぞれの申告方法について詳しく見ていきましょう。

(白色申告とは)

(白色申告とは)

白色申告とは、簡単な帳簿により事業損益を集計して申告・納税をする方法であり、青色申告以外の申告方法を言います。

青色申告に比べて帳簿の整理・記帳が簡単である変わりに、各種控除を受けることができないといったデメリットがあり

納税額は高めになることが多いです。

(白色申告のメリット)

まずは白色申告のメリットについて解説します。

① 開業しても届出が不要

本来、事業を開始した人は開業届を税務署に提出しなければなりません。

しかしながら白色申告においては開業届を出さなくても罰則等がなく、実際には開業届等を何も提出せずに事業を行っている方がほとんどです。

② 簡単な記帳方法

白色申告の帳簿は簡易な記帳方法で作成することが可能です。

簡易な記帳方法とは、事業の売上や費用などを日付・相手先とともに家計簿のようにまとめるイメージに近いです。

青色申告では取引を一つ一つ記帳する必要がありますが、白色申告では一日の合計金額をまとめて記帳することも認められています。

申告をするにあたって最終的に作成する資料も収支内訳書というシンプルなものになります。

(白色申告のデメリット)

次に白色申告のデメリットについて解説します。

① 各種控除を受けることができない

逆説的な説明になりますが、青色申告では様々な控除を受けることができ、結果として納税額を低く抑えることができます。

白色申告ではそのような控除を受けることができません。各種控除とは次のようなものになります。

(それぞれの説明は青色申告のメリットにおいて行います。)

  • ・青色申告特別控除(10万円、55万円、65万円のいずれか)
  • ・純損失の繰越控除
  • ・青色専従者給与
  • ・少額減価償却資産の特例
  • ・貸倒引当金の計上(一括評価による)
  • ・純損失の繰戻し還付

② 記帳と帳簿保存義務の厳格化

その昔は前々年または前年の所得が300万を超えた場合のみ記帳と帳簿保存を義務付けていました。

逆を言えば所得が300万円以内であれば、記帳や帳簿保存が不要であり、その簡便さが白色申告における最大のメリットでした。

しかしながら税制改正により2014年1月からすべての事業者に対して記帳と帳簿保存が義務付けられることとなり、メリットの効果は激減しています。

(青色申告とは)

(青色申告とは)

青色申告とは、提出期限までに青色申告承認申請書を税務署長に提出し、一定レベル以上の記帳を行うことを条件に、各種控除の優遇を受けることができる確定申告方法です。

前述の白色申告に比べ、記帳のハードルが高い(多少の簿記の知識は必要)分、納税額は低めに抑えることができます。

(青色申告の対象者)

青色申告の対象者は、不動産所得・事業所得・山林所得の人です。

サラリーマン等の給与所得・株の配当の配当所得・土地の売買による譲渡所得・その他雑所得や一時所得等は対象になりません。

(青色申告の最近の改正)

青色申告の最大のメリットは各種控除を受けることができる点です。

その中でも青色申告特別控除のうち、正規の簿記の原則にしたがって記帳をし、貸借対照表・損益計算書を提出する人が適用できる

控除の最高額が、従前の65万円から令和2年分以後の申告については55万円に引き下げられました。

※55万円控除の人が、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告をしている場合は65万円の控除を受けることができます。

(青色申告をするために必要なこと)

青色申告には適正な申告をすることで納税額が圧倒的に少なくなるというメリットがあります。

反対にデメリットは、記帳の難しさ・手続きの煩雑さにあります。難解な部分をきちんと抑え青色申告にチャレンジしてみましょう。

(青色申告承認申請書の提出)

新たに青色申告の申請をする人は、期限までに所轄税務署長に青色申告承認申請書を提出しなければいけません。

① 事業を行っている人の期限

継続して事業を行っている人は、新たに青色申告をしようとする年の3月15日が提出期限となります。

(例:2021年から青色申告をする場合は、2021年3月15日が提出期限)

② 新たに事業を始めた人の期限

新たに事業を始めた人は事業を開始した日から2ヶ月以内が提出期限となります。

(例:2021年4月1日に事業を開始した場合は、2021年5月31日が提出期限)

また、その日が3月15日よりも先に到来する場合は、3月15日が期限となります。

(例:2021年1月5日に事業を開始した場合は、2021年3月15日が提出期限)

(青色申告をするために必要な帳簿とは)

青色申告をするためには正規の簿記の原則に従って作成した帳簿が必要となります。

その帳簿に基づいて貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付して提出すると最大55万円の青色申告特別控除を受けることができます。

それ以外の人は10万円の控除となります。

※55万円控除の人が、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告をしている場合は65万円の控除を受けることができます。

また、正規の簿記の原則に従った記帳をするためには、複式簿記による記帳が必要となり、一般的には次のような帳簿を備えることになります。

① 仕訳帳

② 総勘定元帳

③ 現金出納帳

④ 売掛帳

⑤ 買掛帳

⑥ 経費帳

⑦ 固定資産台帳

(青色申告のメリット)

青色申告は記帳や手続きのハードルが高い分、それを乗り越えれば様々な控除を受けることができ、圧倒的に納税額を抑えることができます。

どうせ苦労して確定申告をするのならば様々な特典を受けることができる青色申告にチャレンジしたいところです。

それでは各種控除のうち代表的なものについて具体的に見ていきましょう。

メリット1(青色申告特別控除)

① 55万円控除

正規の簿記の原則に従って貸借対照表と損益計算書を作成し、それを添付して確定申告書を提出すると受けることができる控除です。

例えば所得税率10%の人が55万円控除を受けると、5.5万円の所得税の節税になります。

② 10万円控除

青色申告でありながら、記帳のレベルが55万円控除を受けるには至らない場合に受けることができる控除です。

例えば所得税率10%の人が10万円控除を受けると、1万円の所得税の節税になります。

また、不動産所得においては、記帳レベルが55万円控除を受ける事ができるレベルであっても、その不動産貸付業が事業的規模に至らない場合は10万円控除の適用になります。

事業的規模とは一般的に次の基準で判断されます。

  • ・アパート、貸間については、10室以上の貸付であること
  • ・貸家については、5棟以上の貸付であること

③ 65万円控除

55万円控除を受けることができる記帳レベルであり、かつ、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告をしている場合に受けることができる控除です。

メリット2(純損失の繰越控除)

青色申告をしている年分の純損失(赤字)については、翌年以降3年間はその損失を繰り越すことができ、所得(黒字)が生じた場合はその損失を所得から控除することで所得を圧縮することができます。

2019年 △1,000の損失

2020年 △500の損失

2021年 2,200の所得

→2,200-1,000-500=700が2021年の所得となる。

尚、3年内に控除できなかった損失は切り捨てとなります。

メリット3(青色事業専従者給与)

事業者が、生計が同じ家族に支払う給与は原則として経費になりません。

しかしながら青色申告者については次に掲げる一定の要件のもとで家族に対する給与が経費になります。

① その家族が、青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること

② その家族が、その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること

③ その家族が、その年を通じて6月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

④ 青色事業専従者給与に関する届出書を、その年の3月15日までに所轄税務署長に提出していること

⑤ 届出書に記載されている方法で支払われ、かつ、その届出金額の範囲内であること

白色申告においても事業専従者控除という制度がありますが、配偶者であれば86万円、配偶者でなければ50万円と金額が限定的です。

参考 国税庁 青色事業専従者給与と事業専従者控除

メリット4(少額減価償却資産の特例)

取得価額が10万円以上の固定資産については、原則、減価償却を通して経費化がされます。

しかし、青色申告には少額減価償却資産の特例があり、取得価額30万円未満の固定資産について、年間合計300万円に達するまでは、その年度の経費にすることができます。

メリット5(一括評価による貸倒引当金の特例)

商取引で発生した債権について、取引先が倒産した場合はその債権の回収ができなくなるリスクがあります。

そのようなリスクに備える引当金として貸倒引当金が存在します。

青色申告の場合は、債権全体に5.5%を乗じることで一括評価による貸倒引当金を設定し、その繰入額を経費計上することができます。

メリット6(特別償却の適用)

一定の要件を満たす固定資産の取得につき、特別償却費の計上をすることができます。

特別償却には様々な制度がありますが、一番有名な「中小企業投資促進税制」においては次の要件を満たした固定資産について30%の特別償却費の計上が可能です。

また、期中に取得したとしても月割の必要はなく30%の特別償却費が計上できます。(新品の取得に限る)

① 機械装置 1台または1機の取得価額が160万円以上のもの

② 工具器具備品 1台または1機の取得価額が120万円以上のもの

③ ソフトウェア 1のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの(事業年度の取得価額の合計額が70万円でも可能)

④ 車両運搬具 車両総重量3.5t以上

メリット7(所得拡大促進税制)

従業員給与が前年に比べて増加している場合に、一定の要件のもと、その増加した額の15%を所得税から控除することができる制度です。

ただし、所得税の20%が控除できる上限額となります。

要件の概要は次の通りとなります。

① 従業員給与が前年の額を上回っていること

② 前年の始めから当年の終わりまで丸々2年間在籍している従業員への給与(継続雇用者給与等支給額)が前年に比べ1.5%以上増加していること

メリット8(純損失の繰戻還付)

その年に生じた損失(赤字)を、前年の所得(黒字)に充当することで、前年に納税した所得税の還付を受ける手続きです。

還付を受けようとする年の確定申告期限内に「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を所轄税務署長に提出する必要があります。

【青色申告を選択する人】

次のグラフは、東京国税局の統計資料に基づいて、所得階級別の事業所得者のうち、青色申告者の占める割合を表したものです。

東京国税局  統計資料

所得階級 ~100万円 ~500万円 ~1,000万円 ~2,000万円 ~5,000万円
事業所得者(人) 307,250 427,524 80,125 25,112 10,472
うち青色申告者(人) 196,756 285,213 65,443 22,637 9,841
割合 64.0% 66.7% 81.7% 90.1% 94.0%

ご覧の通り、所得階級と比例して青色申告者の締める割合は増えて行きます。

高所得者になればなるほど各種控除を適用することで賢く納税していることがわかります。

【青色申告ではなくなるとき】

今までご紹介してきた通り様々なメリットがある青色申告ですが、青色申告ではなくなるケースが2通りあります。

(青色申告の取りやめ)

今まで青色申告を受けてきた事業者が自ら青色申告をやめるときは、青色申告をやめようとする年の翌年3月15日までに、所得税の青色申告の取りやめ届出書を所轄税務署長に提出する必要があります。

自らが取りやめを選択するケースとして、例えば、今まで確定申告を税理士に依頼していたが、今後は自分で申告をしようとした場合に、青色申告で定められている記帳要件を保つことができない場合、等が考えられます。

(青色申告の承認の取消し)

青色申告を行っている事業者が次に掲げるようなことを行ったときは、内容を勘案の上、税務署長から青色申告の承認を取り消される場合があります。

① 税務調査において帳簿書類の提示を何度求めても、正当な理由なく、帳簿提示を拒否した場合

② 隠ぺい、仮装等により虚偽の申告をした場合

こちらに取消しに至る事務運営指針が詳細に載っています。

参考 国税庁 個人の青色申告の承認の取消しについて

【まとめ】

事業を行っている方であれば誰もが自身の事業を安定させたい・成長させたいと考えています。

その中で税金というのは非常に大きなコストです。

一年間の税金を確定させるための手続きとして存在する確定申告ですが、どうせ行うならば少しでも有利な方法で申告したいものです。

その大きな分岐点が青色申告と白色申告です。

今回お伝えさせてもらったように、この両者には大きな違いが存在します。

煩雑ではありますが毎年行うことで慣れてくる部分もあります。

是非とも、青色申告に挑戦することで税務コストを削減し、自身の事業を安定させていただきたいと思います。

経験上、事業収入が500万円を超えてくる方は間違いなく青色申告に挑戦された方がいいです。

逆に、事務仕事がどうしても苦手で、そこに時間を使うならば本業をドンドン伸ばす時間に充てたい!という前向きな理由があれば白色申告でも問題ないかもしれません。

 

確定申告に取り組む中でわからないところ、確認したいところ、もしくは、申告自体をどのように行っていったら良いかの相談も含めまして、お困りごとがありましたら、いつでもお気軽に当社までご連絡ください。

 

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